メランコリア

想像の膜を破り 物質的山河の涯に投げ出されると そこは革命運動のさなかで 無数の旗が翻り空を埋め尽くし 無数の声が割れて空間を満たし その隙間を幼子が歩いていた 物質界の反転現象は 宇宙を光の速度で侵食し いのちを喰い破り 夢を焼き尽くし 空間を粉々にしてゆく 革命の嬌声は そんな物質的郷愁を平らげ 街娼の衣の裾のように風に揺れる 夜明けの声明の響くころ 山河は押し黙り 想像であることも 物質であることも拒絶する 物質の淵を散策する男は散在する想像の欠片を拾い集め ごくりと呑みながら 涯へ 涯へ と歩いてゆく 人類の歴史が閉じるころ 革命は宇宙的戯言である と男は吐き捨てるように呟き 物質の淵から身を投げる そこにひろごる波紋は メランコリアのように ただ空間を 光のさざめきのように揺らした