冬の森に十六夜の月が高々と昇った 広場の真ん中に堆く積み上げられた薪に点火されると 歓声がわきあがる ハイイログマが短い挨拶をすませると 蔦で拵えた冠を火のなかに投げ入れた 喇叭が鳴り 太鼓が地を震わせると 集まったものどもがやんややんやと踊りはじめる 春宮の翁が 少し離れたところからその様子を眺める そして徐にたちあがると優雅に舞いはじめる 舞にあわせ 森の木々が揺れ 鳥どもが囀り 小さな旋風がそこかしこでゆらめく こんな祭りが誰に知られるともなく もう三千年もつづけられてきた そして今宵の祭りを最後に この森が返される 火が月を焦がしそうなほどますます高くなる ぱちぱちぱち と火がはじけたとき 鳥どもが一斉に火に飛びこんだ 焦げた匂いがあたりに漂うなか つぎは野鼠どもが一斉に火に飛びこむ それでも祭りはつづく ひときわ高く喇叭が鳴る つぎは兎どもが火に飛びこみ 虫どもが飛びこみ 魚たちが飛びこむ そして森のものどもがつぎつぎに火に飛びこんでいく そして木々が順に火に飛びこみ 最後に山が火に飛びこむと そこには月よりも大きな炎だけが残った 火の燃えさかる音のするなか あたりはしんしんと静まりかえっている